映画万引き家族。大好きな樹木希林さんも出ているし、カンヌ映画祭のパルムドールを受賞した、ということで、見てみたのですが…
なんだか鬱々とした気分。
家族ってなんだろう。この映画のポスターに“盗んだのは絆でした”と、ありますが、そんな綺麗事ではなく…。今回は思いっきりネタバレ考察です。みたことがない方は気をつけて下さいね。
といっても、テンションがだだ下がりなので、うまくかけるか自身はないですが^^;
では、いってみよ
もくじ
感想20 万引き家族
STORY
ざっくりと説明します。
高層マンションの谷間にひっそりと立つ平屋に初枝(樹木希林)・信代(安藤さくら)・治(リリーフランキー)・亜紀(松岡茉優)・翔太(城桧吏)が暮らしていた。日雇いで働く治、クリーニング店で働く信代だが、生活は苦しく万引きをしながら、初枝の年金も頼りに生きている。亜紀も風俗で働き、翔太は学校へは行っていない。
ある日、治はマンションの1階のベランダで震えている幼いゆりという女の子を見つけ、みかねて連れて帰る。どうやら虐待を受けているらしい。一旦は返そうと家まで連れて行くが、「産みたくて産んだわけじゃない」と言い争う母親の声を聞き、またそのまま連れ帰る。
そんな中、ゆりが行方不明というニュースがテレビに流れる。ゆりは帰りたくないという意思表示をし、髪を切り、名前をりんに変えて生きることを選ぶ。
貧しいながらも、楽しく生きている家族。そんな中、初枝が老衰でなくなってしまう。そのまま家の下に埋め、引き続き初枝の年金をもらう信代達。
一方、翔太は万引きをすることに疑問を抱き始めていた。
ある日、スーパーで万引きをするりんが見つかりそうになるのをかばって、翔太が捕まってしまい、それがきっかけでみんな警察に捕まってしまう。貧しいながらも幸せだった暮らしは終わりを迎える
ろくでもない人たちなんだけど… ここからネタバレてます。ご注意を
本当にろくでもない人たちなんですよこれが。治は万引きするし、足の怪我が治っても働かないし、警察に捕まった時も、全部信代のせいにするし。
初枝は、毎月元夫の家族からお金をせびっているし。
信代も万引きしてます。そしてラストでは、元夫を殺した(正当防衛のようですけどね)と明かされます。
でも、何がいいってこの人たち、人間の一番大事な部分が豊かなんですよ。要するに愛がある。
みんなろくでもないけど愛情があって、人間として一番大事な部分が本当に豊かで憎めない。
特に信代の愛情はすごいです。もう、広くて大きな愛って表現がぴったり(あんまり深い、という感じはしないんだけどね)
最後に、一緒に暮らしていたこの6人、実は誰1人血が繋がっていないということがわかりますが、すごく楽しそうに暮らしているんです。
みんなで海に行った時なんて、本当に仲の良い家族にしか見えません。警察に捕まった後に、りんがこの時の絵を描いているのですが、どれだけ楽しい思い出だったかがわかります。
りんの本当の母親と、信代の愛
一方、りんは真冬の2月に外に出されて震えているような生活をしていました。そして、信代から水着を買ってもらうときも、「これが欲しい?」という声掛けにいらない、と意思表示し、その後「たたかない?」と聞きます。
ラストで、本当の母親から「じゅり(りんの本名)、お洋服買ってあげるから、おいで」と言われて、頑なに拒む場面があるのですが、きっと日常的にそうやってたたかれていたんでしょうね。
信代とお風呂に入る時、お互いに同じ場所に火傷の跡があることがわかり、りんは信代の火傷跡をいつまでもさすっています。「もう治ったから痛くないよ」と信代が言っても、首を振ってさすり続けます。きっと、りんの中ではまだ治ってないのでしょう。
その後、信代が「たたかれるのはりんが悪いからじゃないんだよ。好きだからたたくっていうけど、あれは嘘だから。本当に好きな時はね…」といって、ぎゅーっとりんを優しく抱きしめます。(セリフは記憶を頼りに書いているので正確ではありません)
この体験が、ある意味救いのないラストの、唯一の光だった気がするんです。
最後は、みんなバラバラになった
翔太が捕まって、信代はりんの誘拐、初代を埋めた罪、全て1人で背負って服役します。(本当に大きな愛だよ!それに比べて治の小者っぷりと来たら(笑))治は一人暮らしをし、翔太は施設へ入り、学校へ通っています。亜紀ははっきりとは描かれていませんが、住んでいた家を見に来るシーンがあるので、どこかで元気に暮らしているのでしょう。
そして、りんは本当の母親の元に返されます。
警察は、誘拐した信代のことを、ややバカにしたように責めます。りんは自分から母親の元に帰りたいと言った、「子供には、母親が必要なんですよ」と。
マスコミも、子供が2ヶ月も行方不明だったにも関わらず、捜索届けも出さなかった親に、「良かったですね」「久しぶりに戻って、お子さんの様子はどうですか」なんて、まるで被害者だったかのように扱います。
結果、また虐待の日々。ラストシーンは、拾われた時と同じように、雪の積もる寒い日にベランダに出されているりんが、1人でビー玉を拾い、その後、壁の向こうをのぞく場面で終わります。(まるで誰か連れ出してくれる人がいないか確認するかのように。)
なんて救いのないラストシーン。ズドーンと胸が重くなって、鬱々とした気分になってしまいました。
法ってなんだろう。こんな虐待する状態を見落として。警察ってなんだろう。血の繋がりってなんだろう。家族ってなんだろう。もやもやもやもや…考えてしまう。
こういうことを考えて欲しくて、この映画は作られたのかな。
唯一の救いは…
でも、りんにとって、あの家族と過ごした日々がこれからの救いになると思うんですよ。虐待されている子供って、なんでそうされるのかわからない。ただただ、自分が悪いんだと思ってしまうんじゃないかな。
でも、信代がちゃんと抱きしめて、りんは悪くない、と教えてくれた。そして、愛のある家族と、楽しく安らかな時間を過ごした。その経験があるから、この過酷な生活が自分のせいではないと思えて、ゆくゆく抜け出せるきっかけになるかもしれない、と思うんです。
本当に、りんがいつか幸せになってほしい…と思いました(涙)
キャスト 他
- 監督・脚本・編集:是枝裕和
まとまらないけど、まとめます
翔太がラストで「わざと捕まったんだ」と言ったのもすごく気になっていて…
頭がいい翔太は、この生活が普通じゃないことを感じ取っていたんだろうね。
結果、学校にも行けるようになった。
だから本当にこの話は綺麗事だけではないのだと思うのだけど…
でも翔太を拾った時、パチンコ屋の駐車場で車の中に置き去りにされていた、という状況から考えて、そんな愛情深い親ではないんでしょうね。
と、いうことは、やっぱりこの愛情深い家族とここまで育ったことは翔太にとってもプラスだったと考えていいのかもしれません。
とにかく、自分に子供ができてからは余計に、虐待のニュースが心に痛い私にとって、このラストは重く、暗く、のしかかりました。
子供が親を選べる時代が来ればいいのに。
親が子供から審査される時代がくればいいのに。
なぜ血が繋がっているからといって、愛してくれない親元に帰らないといけないのか、嘘をつき演技をする親を、どう見破ればいいのか…
もう、本当に考えることが沢山あった映画でした。
それにしても、安藤さくらの演技、最後警察官の前で泣くシーンがあるのだけれど、ぎゅっと胸に響いた。
そして樹木希林さん!先日、日日是好日を見たのですが、その時の、道に生きるお茶の先生から、今回のいってみれば底辺で生きる人々まで、決して憑依系の人のように演技がガラッと変わるわけではなく、それは樹木希林さんの演技なんですが、見事に演じ分けていて…
本当に不思議な女優さんだと思いました。樹木希林さんのような方を達人というのかもしれないですね。
案の定全くまとまりませんけど、一度は見ておく価値のある映画だと思いました。
ということで許して下さい^^;
こちらは原作