表紙の写真

世の中、信じられないような凶悪犯罪がたくさん起こり、毎日悲しいニュースで溢れていますが、その理由としてただ単にパーソナリティの問題だけではない、隠れた障がいがある、と警鐘を鳴らしている本です。

何となく気になるタイトルで手に取ったこの本。読んで良かったです。まだ小さい子供がいる私。子供の友達(もちろん自分の子供もですが)を少し気をつけてみてあげて、何かひっかかる場合は適切な支援を受けられるように、働きかけてあげたいなぁと思いました。

(サムネイルの写真、帯がなくなっていて、本の帯に実際にケーキが切れない様子が描かれていたので、ここにリンクを貼ります。帯の絵はケーキの3等分をしてもらった図です。)

感想 ケーキの切れない非行少年たち

著者の宮口幸治さん

この本の著者の宮口さんは、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務され、2016年より立命館大学産業社会学部教授。困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主宰されています。医学博士であり、臨床心理士でもあります。

ざっくりとこの本の趣旨

本当にざっくりとこの本の趣旨を説明しますと、暴力、万引きや性犯罪など、何らかの問題を起こし医療少年院にくる子供達。その子供達は実は意外なほどに明るかったり、屈託なかったりする子供も多かった。そんな子供達と接するうちに、筆者の宮口さんはかなりの割合で認知力が弱い子供がいることに気がつきます。

少年院というと、とにかく決まったカリキュラムをこなし、反省を促すような方法で更正させて行くのですが、そもそも反省以前の子供達が多く存在するのだと。

そんな子供達に、高圧的に怒り反省するように促したところで、なぜ怒られているのかも理解できず、悪循環を招いてしまうというのです。

ではどうすればいいのか、見過ごされがちな軽度知的障害や境界知能(明らかな知的障害ではないが、場合によっては支援が必要)の子供を、小さな時から見極め、適切な支援をすることが大切ということ、そして、1日5分の認知トレーニング(コグトレ)を行うことで日本が変わるんだと、この著者は言っています。

精神科に来る子どもたちは比較的恵まれている

最初は精神科で、性犯罪などを繰り返してしまう少年等を認知行動療法で治療していた著者の宮口さんですが、そのうちどうしても認知行動療法では効果が出ない少年に出会います。そこで知的なハンディがあると、認知行動療法では治療の効果が出にくい、ということを悟ります。

そしてそう言った子どもたちの支援についてのヒントを求め、医療少年院という、犯罪を犯した発達障害を持つ子どもたちの矯正施設で働くことになるのです。

そこで、病院を受診する児童や青年は、比較的恵まれた子どもたちであることを知ったそうです。要するに、病院に連れてきてくれる保護者や支援者に恵まれず、障害に気が付かれず、学校でイジメに遭い、非行に走って加害者になり、警察に逮捕され、さらに少年鑑別所に回され、そこで初めてその子に「障害があった」と気がつかれるという現状があるのだと。

この事実に衝撃を受けてしまいました。考えればそうなんですよ。何か問題行動があっても、それを見つけて、さらに心配して病院に連れてきてくれる保護者がいなければ、見過ごされてしまう現実。

そんな不幸が続いて犯罪にまで発展することが決して少なくない事実に驚きます。

自分はやさしいという殺人犯 ケーキのきれない非行少年たち

さらに驚く内容が続きます。この著者が、「自分はどんな人間だと思うか?」と質問した所、約8割の少年が「自分はやさしい人間だ」と答えたというのです。これがどうやら本気で思っているらしいと。

では、「君はこういう事件をおこした。それでもやさしいと思うか?」と問うと、そこで初めて、「…それはやさしくないかもしれません」と気がつくのだそうです。そこまで言って初めて気がつく。

また、この本の帯にも載っていますが、多くの少年達が円のケーキを3等分するように言っても、なかなか3つに分けることができないのだそうです。著者の宮口さんはこの結果を見て、この子達には全てが歪んで見えているのだ、と衝撃を受けたと書いてます。

クラスの下から5人には注意

理解力や、見る力、聞く力などの認知能力。その能力が正常に発達してこそ、学校の勉強というのは積み重なっていきます。著者曰く、学校の成績がクラスの下から5人の子供たちは、そう言った認知機能に問題がある場合があり、注意深く見守っていく必要があるとのこと。なんだか一気に身近な話に感じますよね。

そしてもし、何かしら問題がありそうであれば、認知機能を鍛えるトレーニングを行なってあげるといいとのことです。

私も、この著者の別の本、「1日5分 教室で使えるコグトレ」という本を買いましたが、注意力(見る力・聞く力・集中力)、感情のコントロール、危険の察知、人との接し方、問題解決、身体を上手に使うトレーニングと、幅広くトレーニングすることができるようになっていて、なかなか使える本だなぁという印象を受けました。

学校の先生方がこう言った事実を知り、適切な支援をしてくれるようになると、将来日本の犯罪者数も減ってくるのではないかと思います。

認知症の方にも言えることかもしれない

と、ここまで書いてきて思ったのですが…これって認知症の方にも言える話なんですよね。そう考えると腑に落ちました。軽度認知症の方が、衝動的に万引きをしてしまったり、人をカッとして殴ってしまったりというような話はよく聞きます。

若い子供たちで考えると衝撃的に思えますが、認知機能の低下が犯罪を引き起こすという事実は、案外知られている話です。

そういえば、高齢の方が通うディケア等でも、認知機能のトレー二ングを行いますが、コグトレとそっくりなことを行います。

ただ、高齢者と違うところは、若者の場合は脳機能が衰えて認知機能に問題が生じてきているのではなく、認知機能がうまく発達できていないということ。

だからこそ、早めに気がついて適切な支援を受けさせてあげたいなぁと思いました。

まとめ

将来犯罪者になるかもしれない、認知機能が発達途上の子供達が、適切な支援によって認知機能の向上→成績の向上が図れれば、きっと犯罪者の減少に繋がります。

そしてこれは遠い世界の話ではなく、自分の子供のクラスでも十分起こり得ることなのだということに驚きを隠せません。

本当に全ての子供に適切な支援が行き渡り、少しでも悲し思いをする子、非行に走る子が少なくなることを祈ります。

そして私の子供は、4月から小学校1年生になりますが、もし同じクラスのお友達で、認知機能に問題がありそうな子がいたら、何かしらヒントになるような働きかけができればいいなぁと改めて思いました。

今子育て中のお母さん、学校の先生にはぜひ読んで欲しい本です。

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